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アブねー! 小脳梗塞 

以前の記事を編集のみ企画の第2弾(これは楽!)。
医療ネタです。チョイ長なので暇なときにでも読んでみてください。
嶋田です。


アブねー! 小脳梗塞

この話の登場人物・内容はすべてフィクションであり、同姓同名の方が存在してもすべて偶然です。不適切な言行がございましたらお詫びします。

救急外来なんかやってるとアブねーってことに時々遭遇します。
持論ですが、『医者は小心者に限る!』
でも裏腹に小心ドクターとバカ医者にかかると高くつくわけですよ。検査多いからね。
何にそんなに臆病になっているかって?
そりゃあ、『見逃し』ですよ。
昔はそんなに臆病にならずに自分の診察技術だけで医療ができた。そんなにストレスはなかった。しかし、時代は変わるんです。
診断に必要なものが診察技術のほかにどんどん増えてきたわけです。
患者サイドは病院に来て当然、現代医療水準であることを期待している。
当然、そうあるべきです。
実際、現代においてCT(Computed tomography; 輪切りの写真)なんて夜中でも多くの施設で撮れる。これがどんどん医者に圧迫をかけるわけです。だって、できるのにやらないで実はクモ膜下出血でした、ってもう勝てないよ。
たまに検査しておいて、見落とす輩もいるけど。
たぶん病気じゃないけど、保身のために検査するという『行動医療学』(自作の言語; 流行るかな~?)が現実には存在するんだな。
技術の進歩は喜ぶべきですよね。しかし、現場は純粋にはそうでもないことがある。
そんな小話をしようというわけです。

今日の当直は小柄な男、瀧崎邦明33歳。
体も小さいが肝っ玉はそれ以上に小さいのが特徴だ。いつもオドオドして、部長の言いなり。雑用マックス。今日も先輩医師に無理に変更された当直だ。
『先生、今日も当直ですか?』ナースが同情して声をかける。
『仕方ないよ。酒井先生のお母さん調子悪いみたいだし・・・』
でもそれは嘘。先輩医師の酒井龍一は最近同業のケイ子に振られ、当直なんかしたくなかった。そんな嘘を真に受ける邦明はとんでもないお人よしだ。

来院してきたのは、めまいを主訴にした39歳女性。すでに自宅で3回嘔吐している。
時計は20:30を指している。
夫が運転して連れてきたようだ。
『今日はどうされましたか?』と邦明。
『今日は昼くらいからめまいがしていたようで、2時間前くらいから吐き気が続いているんです』と本気で心配している様子の夫が代弁した。
『実際、吐いたりしましたか?』
『もう3回は吐いています』と夫。
小心者だから細かく聞かないと落ち着かない。夫によれば、数年前にも似たような症状があり近くの医院でメニエール病と言われたようだ。今回は回転するようなめまい。起き上がれる様子もない。
(また、メニエールの再発作かなぁ?)と邦明は心で自問。
『今まで大きな病気にかかったとか、現在薬を内服しているとかありますか?』
さすがに慎重だ。『いいえ』とか細い声で答える患者本人。
『薬のアレルギーはありますか?また、妊娠中の可能性はありますか?』
うーん、いいねっっ、この慎重さっ。すてき。
しつこい程の病歴聴取に夫も少し嫌気がさしていた。
ようやく診察に移る気になったようだ。
目を見て、喉を見て、首、胸部、腹部、下肢、あー全部見てる、全部見てる。すげー。
最後に神経学的所見といって、大脳、脳神経、小脳、脊髄などの機能評価をする。
ここで邦明が注意深く行ったのは小脳失調症状の有無だ。
女性に両手を上げさせ『ヒラヒラ』と速く繰り返させる。さらに女性の人差し指を本人の鼻につけさせ、差し出した邦明の太くて短い不器用そうな指にピッタリあわさせる。これをできるだけ速く反復させるわけだ。両手について行う。
さらに歩行状態をみて、眼振(がんしん)をみてとかなりしつこい。

結果は明らかな異常を認めなかった。
『小脳梗塞ではなさそうだなぁ』と邦明は満足気。
頭の中は一気にメニエール病の診断に傾く。
『以前言われたメニエール病の再発だと思います』邦明は彼にしては自身ありげに2人に説明した。
『少し点滴をして様子をみましょう。症状が強くなるようなら言ってください』
『はい、分かりました』夫は邦明の執拗なまでの診察と説明に満足している。
『じゃあ、ソリタティーワン™500mlでラインとって、メイロン™(めまい止め)1筒アイブイ(i.v; intra venous; 静脈注射の意味)します』
点滴のオーダーをいれ、慣習では看護師が点滴の針を血管に入れることが多いが、邦明は自分ですることにしている。
いるよねー、こういう医者。

邦明は点滴ラインをとりメイロン™を静脈注射した。
20分後、再び嘔吐。めまいは増悪している。
『もう1筒、アイブイします』邦明は独り言のように言う。
さらに20分後。症状は変わらない、いや悪くなっているようだ。嘔吐の頻度は増し、彼女は動こうとしない。動けばめまいが増幅し、また嘔吐してしまいそうだ。
『頭のCTを撮りましょう』邦明の頭は、再び小脳疾患の可能性を考え始めたわけだ。
10分後に頭部CT写真に目をやると、小脳が一部灰色に抜けている。

『・・・小脳梗塞だぁ』

患者本人、そして夫に病名と病態を説明し、今後のことについては神経内科の医師から説明がある旨を話した。

これだけ小心者の医師だったからこそ、小脳梗塞は見つかった。
『医者は小心者に限る』といった理由だ。しかしもっと症状の乏しい小脳梗塞であれば見逃されていた可能性は十分あったわけだ。
バカ医者は何も考えずに『めまいを伴う嘔吐』というだけで頭部CTをすぐにオーダーする。結果は同じ。本当に差はないのか?
長期的に見れば小心者医師はコストを抑えた医療を行える。バカ医者は常に高いコストを要求することになる。
患者サイドからすれば、これはなかなか見抜けない。
さらに小心者医師の中には違う意味も含まれていて、訴訟に対して小心であるということである。つまり保身。
このために『違うだろうなー』と半ば確信しているのに頭部CTを除外診断に用いる。これは『行動医療学』で非科学的過ぎる。
現在の日本では横行している心理学的行為である。この行動医療学による医療費増加も相当あるんじゃないか?

小脳梗塞はもっとも見落とされやすい疾患のひとつ。疑っていないと診断できない病気だ。医者も患者も要注意。

じゃあ、恒例の?医療費チェック!
もう、皆さんは初診料は分かりますね。今回は時間外扱いですね。したがって初診の場合は270+85点で355点。

今回は点滴を行っています。
これまた、マニアックですが注射(手技)料+薬剤料で構成されいます。点滴注射の場合、500ml以上だと何故か手技料が値上がりするんです。やること一緒じゃん!
500ml未満は47点、500ml以上は95点です。さらに今回使用したソリタティーワン™の薬剤料は208点でしめて303点。さらにメイロン™を静脈注射しているので静脈注射手技料30点に薬剤料92点x2が追加され517点。

さらに今回の目玉検査が頭部単純CT撮影です。単純撮影は660点、さらに緊急加算130点、診断料450点!っでしめて1240点でーす。フィルム代なしのトータルは?
チャリーン。21120円でーす。高っ!
実際に支払う3割負担額でも6336円だよ。

この後入院となり入院一式(血液検査・胸部レントゲン・心電図)の検査をされ、さらに頭部MRI、MRA(血管がみえるMRI)、頚動脈超音波検査などなど多くの検査を施行されたことは言うまでも無い。
かなり値の張る薬で脳保護作用のあるとされる薬や、脳のむくみをとる薬も使われましたよー。(入院治療となり、計算が面倒につき詳細は割愛。いつかそのうち説明しますよ。)

まぁ、しかし今回の小心ドクターは比較的優秀君でちゃんと診断までたどり着いた。世にいるバカ医者あるいは保身ドクターは『何も考えずに』あるいは『違うなー』と半ば確信しながら、頭部CTをオーダーする。
しかも12400円(3割負担でも3720円)もすることなんか知らないんだな、多くの医者は・・・

今回は小脳梗塞というなかなか見逃す可能性をはらんだ疾患についての夜間診療小話でした。
今後のネタになることは、バカ医者を淘汰するシステム、保身ドクターの根拠の無い心理的行為を抑制するシステム、さらに今後の高齢化社会で1割負担の高齢者が気軽に病院に殺到する可能性は十分あり、受診率低下モデルの構築を考える必要があるということだろう。

受診率低下モデルについては僕もいろいろ考えているが、なかなか難しい問題だ。
日本人は不安になりやすいのだろう、きっと。OECD(Organization for Economic Co-operation and Development; 経済協力開発機構)のデータでも日本人の年間受診回数は諸外国よりかなり多いようだ。
一般の人は7割が税金であること、高齢者は9割が税金であること、医者はそのすべてを強く自覚する必要がある。

分かっていても医者の仕事は『サービス』であり『安心を売る職業』なんだ。多々ある矛盾する問題をどう解決していきますか?

って、ちょっとマジメに話してみましたが、夜間診療についての本心は『みんな、夜はゆっくり寝ていてくれー』とか『ある程度は我慢できるなら明日の朝に来てくれー』という医師の痛切な叫びです。
実際、医者の多くは肉体・精神とも疲弊しきっているです。
結構、つらいんですよー。

(終わり)

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[ 2006/12/13 03:22 ] 医療一般/医療経済 | TB(0) | CM(0)

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